福田正博　引退試合
浦和レッズ対レッズ歴代選抜
2003.6.15 埼玉スタジアム２００２

　ミスターレッズ、福田正博の引退試合。かつて日本代表にも選ばれた我らが浦和のエース福田のサヨナラゲーム！行かないわけにはいかないでしょ〜！Ｊリーグ開幕からの実に１１年間、Ｊリーグのレベルの底上げ、人気の底上げ、町ぐるみの底上げ・・福田に限らずドーハの頃からの選手が残してくれた功績は大きいが、僕ら浦和サポーターにとってみれば福田はさらに特別なものがあった。まさに宝物、その宝物がピッチに別れを告げる。

　９８年Ｗ杯を期にサッカーにはまった僕は福田の全盛期を生で見たことなんてありません。バインが福田にすばらしいパスを送り続けて９５年の得点王、僕が浦和のすばらしさを知るずっと前のお話。ここをご覧の生粋の浦和サポから見れば、福田の全盛を知らないにわかサポではありますが、９８年から浦和を応援してきて、福田って選手がいかに大きかったか、宝物だったか、この数年間で十分に理解できた。正直、福田が劇的に大活躍して勝った試合を生で見た記憶はあまりありませんが、福田が入ると浦和ってクラブに火がついたって試合は何度も見てきた。福田は特別でした。引退を発表した会見場で「浦和以外のユニフォームを着てプレーすることを考えられない」といい放った福田の涙が忘れられない。浦和の「９」今でも福田しか考えられない。

　この日の埼玉スタジアム２００２は雨模様にもかかわらず５万を越える浦和サポーターたちが詰め掛けていた。たったひとりの選手のために５万人！きっとみんな同じ気持ちなのでしょう、僕らと同様に浦和を愛した愛しい選手にお別れをしに来たのです。「浦和対浦和歴代選抜」そうそうたる顔ぶれだった。バイン、ブッフバルト、ペトロビッチ、井原、岡野・・、福田がいかに浦和にサポーターに愛された選手だったかが分かる。

　練習に選手たちが出てくるとすでに真っ赤に染まっていたスタジアムからは怒涛の歓声、福田にはもちろんのこと、懐かしい顔ぶれにも声援が飛ぶ！そんな中でも一番大きな歓声を浴びたのはなんと！小野伸二！！「あぁぁ伸二だ！！何でいるの？」そんな声が漏れスタジアムがどよめく。怪我で代表まで辞退したってのに福田の引退試合には出るのか？もちろん浦和歴代選抜には入ってないけど、いってもこの試合はお祭り、伸二が飛び込みでちょっと参加したって５万人は大歓迎だ。「伸二がでるのかな？まぁないだろうなぁ？」と思いつつも万が一のひょっとしてを期待してテンションはさらに高まる。

　小雨が漂うなか１５時、至福の時間を告げるホイッスルが鳴った。どっちを応援すればいいんだ？まぁお祭りの試合なんで試合どうこうはそんなにね。でもね、やっぱ切れていたのは田中、この日２得点ってのもすばらしいけど早いし切れるし、福田も安心して浦和を去ることができるでしょうね。やっぱ福田の「９」を継いだ永井が出れなかったのはちょっと残念だったな。代表に呼ばれちゃっているんじゃそっちを優先するのは当たり前ですけどね。この日、いっちゃん印象に残ったシュートつったら浦和歴代選抜の岡野のゴール、３０ｍくらいあったかな？ドーンと左足で振り抜いて見事浦和ゴールの右隅に突き刺さった。Ｗクラスのシュートでした。岡野のあんなシュート一回も見たことないよ・・。あとはやっぱ福田のプレー、前半は浦和歴代選抜として出場、前半１５分くらいでした。バインからのキレーに通ったスルーに福田がお見事ドンピシャリ！ゴールにはならなかったけど、あのビデオで見た全盛期の再現だった。これが一番よかったかな？後半３０分過ぎから今度は浦和のユニフォームを着て再登場した福田がヘッドで得点するも、そこはお祭り、ＤＦはだぁれもついてなかったしね。でも最後のＧＥＴ　ＧＯＡＬ！が見れてホント良かった！４−１、浦和現役の勝利に終わりました。

　試合終了後、福田の引退セレモニー、スタジアムはなんともいえない熱気に包まれる。サポーターが福田を送り出す準備にかかる。僕らは配られた赤い風船を膨らませてスタンバイ、それもひとり６個膨らませろってんだからどうなっちゃうの？ピッチにはサポーターナンバー「１２」の入った赤、白、黒のフラッグが引きつめられた。ホーム側には巨大な浦和の「９」のユニフォーム型フラッグ、アウェイ側には見事に浮かび上がった「ＧＥＴ　ＧＯＡＬ　ＦＵＫＵＤＡ！」の文字、そしてサポーターからの「ゲットゴール！福田ぁ！」の声援。会見で泣いてしまった福田はこの日は泣かずにピッチを去ろうと決めていたとのことですが、このフラッグとサポーターの声援の中、さすがに熱いものが込み上げてきたとか。ゆっくりとお立ち台に向かった福田に浦和サポーターからの恐ろしいまでの声援が飛ぶ！こんな中１１年間も戦ってきたのです。福田もすばらしい宝物だったって思うけど、このサポーターもホント最高！福田がここまで浦和を愛したのはきっとこのサポーターがあったからなんですね。今更ながら真っ赤に染まった熱いスタジアムでそんなことを実感してしまいました。恐ろしい声援の中、花束を持って現れたのは「２８」ルーキーナンバーをつけた浦和のやっぱり宝物小野、抱き合うふたりの光景は僕にも覚えがある。伸二の登場でさらに高まったボルテージ、そんな中、福田が静かに切り出した。静まり返る５万人、「浦和レッズの選手として１１年間、全力を尽くして戦ってきました。多くの成功を収めることはできませんでしたが、多くの仲間と多くのサポーターと喜び、悲しみ、同じ夢を追い続けてきたことを誇りに思います。心から感謝します。いつの日かまた一緒に戦える日を楽しみにしています。１１年間、熱い声援、多くの勇気をありがとう！」再び怒涛の声援が福田を包む、静かにうずくまった福田は両足のスパイクを脱いで天に掲げる。福田のスパイクは空に登ってそれをサポートするようにたくさんの赤い風船が飛んだ。サヨナラ福田！いままでこちらそこありがとう！！そしてお疲れ様！！またいつか、同じ夢を！

　浦和の「９」は福田しか考えられない。それは今だけのこと、そうであってほしい。福田の９が永遠に！って気持ちもある、僕らは絶対忘れない。でも、その記憶すらすっ飛ばすような、新しい「９」が現れてほしい。永井に「オレが浦和の９だ」と言うところを見せてもらいたい。また永井のあとに９をつける選手にまたそのあとの選手に、浦和の最高の「９」が何人いたってかまわないって僕は思うのです。偉大な選手が引退した。その選手が胸を張れるように！「今の子供たちは知らないだろうけど、日本代表の○○のつけている浦和の「９」は昔、オレがつけていたんだぜ！」「おじちゃんすげえんだね！」１０年後？２０年後？僕らのサポートは続く。　（やす）